伊織 椒のブログ(仮)

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第5回シンデレラガール総選挙中間発表に際する、『シンデレラガールズ』と速水奏についての私的覚え書き

速水奏が中間発表にて属性別上位15位圏外だったことに際して、『シンデレラガールズ』と速水奏についての思考を整理するために個人的に行った私見の列記を基に、公開のために表現を整理した文章です。結論を予め述べると、第5回シンデレラガール総選挙における奏の実績は中堅程度に留まると予測しています。この記事はその結論に至るまでの過程を示したものであり、愉快な性質ではないと認識しています。(2016年4月30日にMobage版にて奏の新規SRカードが実装されたため、5月1日に追記を行いました)

 〈『シンデレラガールズ』というゲーム〉をどのように規定するか

 プレイヤーはアイドルのプロデューサーを演じます。プロデュース対象は、約200人のアイドルから任意に選択できます。

各アイドルは基本的にカードという形式で描かれます。1種のカードにつき2種の状態(特訓前/特訓後)が存在し、各状態に1枚ずつの絵と、複数の台詞が与えられています。

同種のカードの特訓前後については、世界や時系列が連続しているものとして扱うべきだと思います。しかし、同一人物の異なるカード同士については、世界や時系列の連続性や順序を保証する要素はありません。

また、人物の在り方が表現される媒体は複数存在します。各種ゲーム内カード、各種ゲーム内イベント、『シンデレラガールズ劇場』、〈ぷちデレラ〉システム、各種音声媒体作品、アニメ作品、『スターライトステージ』など、様々な媒体が用意されています。そして私は、シリーズ全体が『アイドルマスター シンデレラガールズ』という1つのゲームを成していると解釈しています。複数の媒体における描写の連続性もまた保証されていません。

以上の性質から、プロデューサーを演じるユーザーには、〈複数のカードやその他の媒体によって示された登場人物の断片的な情報を検討、選択し、人物の在り方を考察、解釈、規定する行為〉が要求されます。人物の在り方の規定は、『シンデレラガールズ』というゲームにおける原初的プロデュース行為です。

登場人物についての基本的資料

公開済みの全情報の参照は理想的行為ですが、『シンデレラガールズ』シリーズにおける各登場人物の全情報を把握することは困難ですし、カード毎に人物の性質が異なる場合もあるため、各人物の基本的性質を規定するための基本的資料を選定する必要があると考えています。

私が妥当だと考える基本的資料は以下の通りです。

Mobage版における基本カード(各アイドルの最初のカードを指す便宜的呼称)
・ぷちデレラおよびぷちエピソード
・『スターライトステージ』における基本カードおよび基本カード特訓エピソード
・『スターライトステージ』におけるメモリアルエピソード

当然、以上の要素の間でも情報が相違している場合がありますが、どの情報を選ぶのかもまたプロデュース行為です。

 第5回シンデレラガール総選挙の現状

第5回シンデレラガール総選挙の中間発表において上位に入った人物には以下のような類型があると思います。

・総合順位第1位になることに強烈な物語性が存在する(卯月、楓)
・CV設定が懸かっている(美優、乃々、芳乃など)
・何らかの要因から不遇と判断されている

 総選挙で上位になった人物へ与えられる恩恵は、新規SR[シンデレラガール]の制作、総選挙CDへの参加、CV未設定人物に対するCV設定などです。これらの恩恵を受けることを要求される人物に投票が集中します。当然の因果です。

 しかし、今回の総選挙に際して散見される「史上初のCute属性シンデレラガールを実現させよう」といった思考には全く賛同しません。

総選挙上位アイドルに新たな活躍の可能性を与えられる構造に対しては、疑問や不満は全くありません。『シンデレラガールズ』のアイドル総数は過剰の域にあると感じますが、その過剰な物量が『シンデレラガールズ』の強烈な魅力だと考えています。そして、過剰な情報量と人気投票企画の組み合わせは、ユーザーによる自発的広報を促進し、個人では把握が難しい情報や魅力の共有へ至り、競争に影響を及ぼします。激化する競争を勝ち抜くほど強い魅力や支持を有する人物には更なる活躍の機会が与えられます。大変面白い構造だと思います。

しかし、〈シンデレラガール〉という実績および称号の性質は、新曲授与やCV設定などとは異なり、報酬よりも名誉としての性質が強いと思います。同情による戴冠は極めて惨めなことだと感じます。属性を投票基準とする行為についても、基本的には、個々の登場人物に対する冒涜だと感じます。歴代シンデレラガール一覧に全属性が揃うことの価値が、私にはわかりません。何が面白いのでしょうか。虚ろな動機だと思います。投票においては個々の人物に対する愛情や期待を伝えるべきだと考えています。個人的な美意識であり、他者に強要し得るものではありませんが。

 速水奏が属性別上位15位圏内に入れなかった理由の推察

・充分に優遇されていた

直近約半年間に抜群の優遇を受けていた奏に新たな活躍の機会を与えようとするユーザーが少なかった可能性があります。

(奏および飯田友子氏の直近約半年間における主な活躍:アニメ版においてProject:Kroneの中心人物を務め、ソロ楽曲の描写を与えられた。実際のライヴ『シンデレラの舞踏会』における演目『Hotel Moonside Extend Live Version』が抜群の好評を博し、翌朝までTwitterのトレンドワードに入り、シングルCDの販売数が増加、ライヴ環境を再現した新音源の制作に至り、『スターライトステージ』におけるSSRカードの各種テキストもライヴを踏襲した内容となった。新ユニット〈LiPPS〉のリーダーに起用され、楽曲『Tulip』でもセンターを務める。後日の公開録音イベントにおける飯田友子氏による〈Tulip〉のソロパフォーマンスが好評を博する。『スターライトステージ』における『Hotel Moonside』のMV演出が好評を博する)

 ・活躍媒体の偏り

直近約半年間の奏の活躍の多くは『スターライトステージ』におけるものでした。『スターライトステージ』を主としているユーザーの支持が、Mobage版で開催されている総選挙に充分に反映されていない可能性があります。

 ・わかりやすい物語の対極のような性質

アニメ版において抜群の物語を示した卯月、無冠の女王と評されるほどの高い人気と実績を有する楓、CV未設定のアイドルなどの中間発表上位陣と比べて、総選挙に際する物語が乏しい状況です。

そもそも奏は謎や秘密が特徴の人物です。例えば『スターライトステージ』のストーリーコミュ第25話は、奏の謎や秘密を起点に、周囲の人物の在り方によって奏の在り方が間接的に示されていく構成でした。また、ぷちエピソードでは「誰にでも分かりやすい理由やストーリーなんて、あるわけないもの。私の空白を埋めてくれるモノが欲しかっただけ」と、自ら象徴的な発言をしています。その他、奏の在り方を決定した過去の出来事の明示も原則的には避けられ続けています。人物の在り方を解釈、規定することが『シンデレラガールズ』というゲームにおける原初的プロデュース行為ならば、奏は原初的プロデュースの難度が高い人物ということになります。

そして、総選挙ではわかりやすい物語があるアイドルが多数に支持される傾向があると感じます。わかりやすい物語の対極にあるような奏は、総選挙では根本的に不利なのかもしれません。

・描写の実態が充分に認知されていない

具体例として、インターネットにて散見される”キス魔”という形容を挙げます。

前提として〈キス魔〉という言葉の用法についての私見を明示します。頻繁にキスを実行する人物を指す用法が一般的かつ常識的だと考えています。

Pixiv百科事典ニコニコ大百科においては、奏を”キス魔”と形容する記述が長期間維持されていました。しかし『シンデレラガールズ』シリーズ全体を通して、奏による特定の対象に対するキスの実行を明示する描写は極めて稀です。したがって、実態に則った客観的記述を行う場合には、奏に対して”キス魔”という形容を用いることは不適切だと思います。

Pixiv百科事典の当該記事については、私が全面的編集を施したため、現在はそのような記述は存在しません。実態を提示しつつ解釈は否定しない記述を意図しましたし、実現できたという自負もあります。一方、ニコニコ大百科においては”キス魔”という記述が取り消し線で処理されており、この表現は奏の実態を示す演出として解釈できるため現在は編集を施していませんが、個人的にはやはりこちらにも納得できません。

そもそも真の問題は、誰もが容易に編集できるサイトの記述を基に作品や登場人物の読解を行おうとすることです。しかし、いかなる情報も観測者の認知に無意識的に影響し得ることを考慮すれば、各種検索エンジンで上位に表示されがちなサイトにおける、客観性を著しく欠く記述は許容したくありません。Google検索にて「速水奏」で検索を行った場合に最上位結果がPixiv百科事典の当該記事であることは、今回の編集の動機の1つでした。

ちなみに、『アイマスタジオ』にて今井麻美氏が奏を”キス魔”と形容した事例がありました。解釈の自由を否定する意図は私にはありません。ただし、多くのユーザーに対して強い影響力を有するであろう人物の発言によって、奏に疎いユーザーに不要な先入観が与えられた可能性を想像すると、大変残念です。

 ・二次創作における扱いの難しさ

造形の解釈やバランスのいい作画が難しい容姿、詩的かつ読解を要求する発言、隙の少ない振る舞いなど、奏は二次創作の題材に選ばれづらい要素が多い人物だと思います。今回の中間発表においても、二次創作で題材に選ばれやすいアイドルが多い印象を受けます。やはり『アイドルマスター』シリーズにおける隆盛に二次創作文化は不可欠だと痛感します。

 ・従来から人気が足りない

過去の総選挙において、CV未設定期には25位、26位という高順位を連続で記録し、CV獲得競争から脱した前回の総選挙においても46位に入っています。奏に一定の人気があることは確かです。しかし、人気アイドルが多いCool属性における中堅のような立場を脱せるほど強い支持は、未だに得られていないのでしょう。

 ・アイドルの第一印象と速水奏の〈第一声〉

繊細な問題です。従来は言及を避けていました。しかし、飯田友子氏の先日のブログ記事にて滑舌の甘さを自認する記述が公開されたため、悩んだ末に、公然の話題としてよいと判断しました。

シンデレラガールズ』の登場人物の基本的情報が音声付きで示される媒体には、各作品の基本カード、ぷちエピソード、『スターライトステージ』のアイドルコミュなどがありますが、これらの音声は優先的に収録されます。

結果、役と演者の関係や演者の能力が未熟な状態で収録されたものが、ユーザーにとってのアイドルの第一声となる場合が多くなるはずです。この構造には、アイドルが最も未熟な時期の様子が演出され得るという利点もあるため、基本的には肯定しています。

以下が本題です。

私は『シンデレラの舞踏会』をLVで鑑賞した際に、飯田氏のパフォーマンスに大いに感動し、速水奏の演者が飯田氏でよかったと心底思いました。そして、直近約半年間の奏の活躍には、演者である飯田氏の実力が無ければ実現しなかったことが多いと考えています。『シンデレラの舞踏会』における圧倒的パフォーマンスは奏の特異点になりました。

一方、初期に収録された音声にて顕著なのですが、飯田氏には滑舌が甘いという特徴があります。役によっては特長になり得る性質かもしれませんが、奏は器用さや抜群の大人っぽさが特徴の人物です。甘い滑舌の声の相性は致命的なまでに悪いと思います。人物像と声が矛盾しているとすら感じます。

ただし、飯田氏の滑舌や表現力は確実に向上しています。私は未だに飯田氏の演技に満足していませんが、新規音声が公開される度に確実な研鑽と成長を感じ、嬉しく思っています。今後の成長にも大いに期待していますし、出演ライヴも極力観に行こうと考えています。

しかし、現在の『シンデレラガールズ』シリーズにおいては、実装された音声は永久に差し替えられません。そして、膨大な人物と情報によって構成されている『シンデレラガールズ』シリーズにおいて、第一印象の影響力は特に強いと感じます。以下は冷酷な発言と自覚しつつ述べますが、現在の原則が維持される限り、今後の奏にどのような展開があっても、第一声によって永久に損をし続ける可能性があると考えています。

また、イラストや3DCGモデルの改変が度々行われているシリーズにおいて音声のみが維持される現状は理不尽です。演者の成長が収録済みの台詞に反映される機会があるべきだと考えています。

今後の展望

第5回シンデレラガール総選挙において奏が強力な上位アイドルを制して上位に入ることは極めて困難だと考えています。投票は継続しますが、正直、今回の結果に期待はしていません。そもそも、総選挙では中堅程度の実績であっても活躍の機会が与えられることは奏自らが幾度も証明してきたことなので、今後の奏の活躍を信じて期待を続けます。

[カタルシスの華]速水奏実装に際する追記(2016年5月1日)

第5回シンデレラガール総選挙用の投票券が付属するガチャにおける登場です。総選挙における順位の向上に期待できます。正直、CD参加圏内に至ることは極めて困難なままだと考えていますが、やはり順位は高い方が嬉しいです。

夜にまつわる活躍が多い奏ですが、今回のカードでは柔らかい光や穏やかな環境の中での姿をみせてくれました。新鮮な魅力が示されつつ、思考と解釈を要求するいつもの奏らしい性質もある、よいカードだと思います。

飯田氏の演技についても、”いつも通りでいつも以上”を体現するように、やはり今回も表現がより豊かになっており、嬉しく思っています。過去のどの奏の声よりも魅力的でした。ただし、それでも私はまだ満足していませんし、期待を続けてもいます。今回の音声を聴いて、次はもっと魅力的な奏を現してくれると確信したからでもあります。『シンデレラガールズ』のライヴ開催も発表されましたが、飯田氏が出演する回は観覧できるように善処します。

今回のカードと同時に実装された『思い出エピソード 前編』は全てのユーザーが無料で確認できるため、多くのユーザーに観ていただけることを願っています。ファンに対する奏の強い情熱や、奏らしい様々な思想が示される、とても面白いエピソードでした。