伊織 椒のブログ(仮)

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『Hotel California』と『Hotel Moonside』のこと

Glenn Frey氏の訃報を知ってからのしばらくの間、『Hotel California』を聴き続けていました。好きな楽曲ですし、『Hotel Moonside』の原典と思しき楽曲でもあります。

Hotel Moonside』は『Hotel California』を踏襲した楽曲である、と判断する根拠は、複数あります。ホテルや永遠という主題を筆頭に、”鳴り出した予感のベル”、”アリバイを三度ペンでなぞれば”は、『Hotel California』の”I heard the mission bell”、”Bring your alibis”に対応しますし、〈手錠〉も”We are all just prisoners here, of our own device”を踏襲した要素と解釈できます。『Hotel California』を意識せずに制作された楽曲ではないはずです。 

似ている2曲ですが、永遠に離れられない場所へ誘われ、最後には出ようとする者の歌である『Hotel California』と、”明日にならない場所”へ誘う立場の者の歌である『Hotel Moonside』は、性質が異なります。仕組みを示す歌としての性質が強い『Hotel California』に対して、『Hotel Moonside』は、誘われる者や〈Hotel Moonside〉の様子をほとんど描かないことによって、速水奏という個人を示す歌としての性質に特化していると思います。

ただし、性質が違っても、似たものを示している2曲であることは確かでしょう。〈Hotel California〉が素敵な場所か、恐ろしい場所か、という問題については、詞から暗喩を豊富に見出すことができることもあり、様々な解釈が通用します。しかし、どのような解釈によってどのような意味を見出したとしても、〈Hotel California〉が魔性の場所であることは確かだと思います。そして『Hotel Moonside』における”明日にならない場所”、”手錠”、”永遠”を求める振る舞いは『Hotel California』を踏襲したものであり、『Hotel Moonside』や速水奏という人物は『Hotel California』の謎や魔性を継承しているとも考えられるでしょう。

Hotel Moonside』の魔性については、〈時〉や〈流れ星〉といった、『シンデレラガールズ』シリーズに頻出する象徴的な要素に対する態度も面白いです。例えば『お願い! シンデレラ』や『流れ星キセキ』のような慎ましい態度の願いや祈りではなく、『Shine!!』の”12時過ぎの魔法”のような堅実な発想でもない、奏らしい強かな思想です。異端的かもしれませんが、極めて『シンデレラガールズ』らしい歌でもあるでしょう。

Hotel Moonside』は、様々な結果を既に残しています。『シンデレラの舞踏会』における大好評、『Extended Live Version』の制作と配信、『スターライトステージ』における[エンドレスナイト]速水奏の登場。どれもがとても喜ばしいことです。しかし、『Hotel California』が示しているように、楽曲には、時間が経っても遺り、世界へ影響を与え続けていく力があります。『Hotel Moonside』も、様々な影響を与え続ける楽曲として在り続けてほしいと思います。我ながら月並みですが、切実な感想です。